脳腫瘍研究の紹介と学部学生の貢献

 田中先生分子あるいは細胞レベルの機能解明、形態?運動の観察、薬物への反応の解析などを通して、様々な難治性疾患に対する新たな治療法の開発を目指しています。また、私たちの研究室では、多くの学部学生?大学院生が先端研究に従事しています。先端研究推進が同時に、研究者育成教育になっていることが特徴です。

 もともと、脳の研究、特に脳内に存在するグリア細胞の研究を中心にしていた純然たるライフサイエンス研究室でしたが、臨床医学系研究室との共同研究が増え、いつしか「患者への還元」を目指す、臨床的研究を分子細胞レベルで推進するのが特色の研究室となってきました。脳神経外科学や救急医学、小児科学、耳鼻咽喉科学など多彩な臨床研究室との共同研究を進めています。ここでは、脳神経外科学講座と共同で進める脳腫瘍研究を紹介します。これらの研究には学部学生が大きく貢献してくれています。

学生1

第90回日本生理学会(平成25年3月:東京)では21人の学部学生が 研究成果を発表し,5人がJunior Investigator’s awardを受賞しました。

 1)グリオーマの浸潤抑制を目標とする研究:矢野元准教授らとともに、グリオーマの浸潤抑制を目指す研究を進めています。グリオーマは脳腫瘍の一種で、すべての腫瘍の中でも最も予後の悪いものの一つです。グリオーマが恐ろしいのは、腫瘍としての無秩序な増殖もさることながら、正常組織に対する浸潤性にあります。とくに微小な浸潤が数多く起こるため、脳外科手術で摘出した後もしばしば再発し、再発時にはもはや手の付けられない状態となることがしばしばです。私たちは、細胞内pH調節タンパク質であるナトリウムイオン/プロトン交換輸送体1(NHE1) が、グリオーマの浸潤メカニズムの一端を担っていることに気づき、その機能制御によりグリオーマ浸潤を抑制できること見出しています。図1にまとめるように、腫瘍細胞そのものに加えて原発巣に動員されるマクロファージ様細胞において、NHE1発現が観察されるほか、潜行性に浸潤した腫瘍細胞塊のなかに、NHE1陽性の血管様の構造が含まれています。これらのNHE1の役割を解析することで、グリオーマの予後改善につながる治療法開発を目指しています。

図1

図1.グリオーマ原発巣と浸潤,および関連する周辺の細胞群

 2)腫瘍幹細胞の研究:高橋寿明講師らとともに、腫瘍幹細胞の研究を進めています。様々な腫瘍において、腫瘍組織中にわずかに存在する腫瘍幹細胞が腫瘍の増大?再発に大きな役割を果たしている事が明らかとなっています。つまり、腫瘍発生は癌化に必要な遺伝子異常が蓄積した一個の腫瘍幹細胞から生じ、多くの娘細胞(いわゆる癌細胞)を産生し腫瘍を増大させるとともに、腫瘍幹細胞自身は自己複製を行う事で腫瘍組織の維持に寄与しています。したがって、腫瘍幹細胞を標的としなければ決して根治的ながん治療とはなり得ません。私たちは悪性脳腫瘍の源とされる「グリオーマの癌幹細胞」を研究対象としています。特に、iPS細胞の作製に必須であり幹細胞性の維持に重要な転写因子Oct-3/4に注目し、分子細胞生物学的手法を取り入れ、癌幹細胞性の獲得のメカニズム解明や薬剤耐性?浸潤能亢進といった治療抵抗性獲得のメカニズム解明に力を入れています。図2は、Oct-3/4を強制発現させたグリオーマ細胞をヌードマウス大腿部に移植し、2ヶ月後コントロール細胞と腫瘍や腫瘍内血管の増勢を比較したものです。Oct-3/4が腫瘍の増大に大きく寄与していることが分かります。

図2. Oct-3/4を強制発現させたグリオーマ細胞。EGFPは増強型緑色蛍光タンパク質であり, その遺伝子を導入することで,グリオーマ細胞の存在を緑色蛍光によって容易に判別できるようにしている。

図2. Oct-3/4を強制発現させたグリオーマ細胞。EGFPは増強型緑色蛍光タンパク質であり、その遺伝子を導入することで,グリオーマ細胞の存在を緑色蛍光によって容易に判別できるようにしている。

研究の特色 

毎日とても大変ですが、クリエイティブに過ごす日々こそ最高の人生だと思っています。

研究の魅力

 養殖環境に関する新しいシステムを作っていく、というダイナミックな研究です。もちろん、私達だけでできるものではなく、地域の漁業者や漁協の方々、町や県などの自治体、さらに学内外の研究機関の方々と連携協力して、研究開発を進めています。様々な分野の方々と情報や意見を交換しながら、研究を進められるのが1つの魅力です。最終的には地域の水産業に貢献することが目標です。

研究の展望

 「患者から学び患者に還元する」という医学部のスローガンを文字通りに実践することを目指してがんばっています。難治性のグリオーマ治療を目指す研究の他、免疫反応を適切に制御する新薬開発の研究なども行っており、患者に還元できる日は遠くないと期待しています。

この研究を志望する方へ

 医学研究では後継者の不足?若手研究者の枯渇が大問題となっていますが、私どもの研究室では若い力が中心となって研究が行われています。「研究!」と構えてしまうと、とっつきにくいような気がするかもしれません。まず、実験してから考える、というのでいかがでしょうか。